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母とのこと【3】
07/01/30

【2】からの続きです。
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それでも、母に直接その言葉を告げることは、大きな勇気を
要しました。 
どうしよう。 やるか、やらないか・・・。
ためらいも 恥ずかしさも ありました。


ところが、

・・・これが、「偶然ではない必然」なのでしょうか。


母のいる実家に、行かなければならない予定ができたのです。

また自分自身が、子育てのことで、とても悩んでいる時期でした。
書籍「鏡の法則」にあったように、もし、私が母への行動を
起こすことで、私の悩みが、少しでも解決するなら・・・
そんな、ワラにもすがるような気持ちに なっていたのです。

心理的にも環境的にも、準備が勝手に整っていました。



そして、子供たちを連れて、実家に行きました。


母は相変わらず、炊事、洗濯、掃除などをいつものように
やっていました。
「何か手伝おうか?」と言っても、
「いいよ、座っていて。」と言い、
当然のように自分で済ませ、私たちのために、食事や布団を
用意してくれました。


そんな母に、

「ありがとね。」 

「助かるよ。」

・・・今まで以上に気持ちが入って、お礼を言う私がいました。


そのせいか、心なしか母も、私に対して優しい態度だったような
気がします。たまに出てくる、誰かの悪口や愚痴も、その時は、
ほとんど聞かれませんでした。



「さあ、言わなきゃ。」

「鏡の法則だ。実践だ。」

「でも、どのタイミングで・・・。」


私は 何度も考えては、ドキドキしていました。
とにかく、2人きりになるチャンスを伺っていました。




・・・もうそろそろ、帰らなければならないという、
1時間くらい前のこと。 

微妙なチャンスが生まれました。
父や子供たちが外に出て、母と2人きりになったのです。

しかも、母が突然に、
「お前は、自分は(お母さんに)怒られてばっかりだった、
 って思っているんでしょ。」

などと、言い始めました。


私は焦りながら、

「えっ、いや、確かに子供の頃はそう思っていたけど、
 でも、まあ、今になって思えば、しょうがなかったのかなぁ、
 って思ってるよ。」

・・・などと言いました。


いよいよ言う時が来たのか。
でも・・・

そう躊躇しているうちに、
下の娘が、「おしっこ~!!」と、帰ってきてしまいました。
「おしっこ?! ハイハイ!」
私は、逃げるように娘を連れて、トイレに行ってしまいました。




結局その後、実家にいる間は、チャンスが訪れませんでした。



私は、母が畑から取ってきた たくさんの野菜と、スーパーで
安売りしていたからと、わざわざ買って来てくれた果物などを
もらい、そのダンボール箱を抱えて、実家を後にしました。

ダンボールと子どもたちを車に載せ、
自宅へ帰るその車中。
私は、一人、自問自答を続けました。


「いいのか? 言うことができなくて、よかったのか?」

「もし、このあと 万が一のことがあって、母に一生、感謝の
 気持ちを伝えることができなかったとしたら、それで私は
 いいのか? 本当にこのまま、帰ってしまっていいのか?!」

そう考えると、いても立ってもいられない気持ちになってきました。


幸い、おじいちゃん(父)と たくさん遊んでもらった子どもたちは、
実家を出てすぐに、チャイルドシートで寝てしまいました。



私は、携帯電話を取り出して、実家に電話をしました。



すぐに母が出ました。



「あっ、お母さん?
 あの、いや、忘れ物をした訳じゃないんだけど、
 あの、言い忘れたことがあったからさ・・・。」


ドキドキする思いで、でも、とりあえず言えることだけ
言ってしまおう、そう思い、言葉を続けました。

 

「あのさ、実家にいる間、ご飯作ってくれたり、洗濯してもらったり、
・・・子どもたちの服まで、・・・そういうの、本当にありがとね。」

「それからさ、私、子供の頃、そういうことをお母さんがしてくれてるの、
 当然のように思ってて、お礼も言ってなかったけど、・・・。 
 ・・・全然、当然じゃなかったなぁ、って思って。 何かさ、私、自分で
 家事や育児やるようになって、全然、当然のことじゃなかったなぁ、
 面倒臭い時もあるんだよな、って、気がつくようになったんだよね。
 だから・・・。 本当に、ありがとね。 ・・・全然、当たり前のことじゃ
 なかったよね。 ・・・感謝しなきゃいけないことだったのに・・・。
 わたし、全然、分かってなくて・・・。 手伝いも、ろくにしなくて・・・。
 本当に、ごめんね・・・。」


何だか、泣きながら母に伝えていました。



母は、多分それ(泣いていること)も察していたのでしょうが、
その事は特に言わず、ただ、弱いような、優しいような声で
言いました。


「・・・いいんだよ、別に。 そんなこと。」

「ただ、とにかくアンタは、無理するんじゃないよ。
 いっつも忙しそうだけど、無理しないで。 とにかく、
 身体壊したら、しょうがないんだから・・・。」

そんな、私のことを心配するような言葉を掛けてくれました。


「うん。・・・うん。 そうだね。 そうだよね。
 ・・・ありがとう。 
 気をつけるよ・・・。」


時間にしたら、5分程度のやり取りだったと思います。
結局言えたのは、簡単な 感謝の言葉だけでした。

母がどう捉えたのかは、正直、分かりません。

でもわたし自身は、大きく救われるような気持ちで
満たされました。


ずっと、ず~っと恨んでいた母のことを、
心から感謝し、しかも、その思いを素直に伝えることができた。


「母を許した」のではない。
わたし自身が、許されたんだ。 救われたんだ。


・・・そんな気持ちで、いっぱいになりました。


子供たちが寝続ける車中で、私は、感動と安堵感に
浸りながら、泣きながらのドライブを続けたのでした――。


                       【4】につづく。

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